「さっぽろヒグマ市民会議」のプロジェクトリーダーを務めた遠藤優さん(北海道大学大学院理学院博士課程)が、12月2日、3日に筑波大学で開かれた第28回「野生生物と社会」学会大会で、池田貴子さん(北海道大学CoSTEP)、三上直之とともに、野生動物管理への市民参加に関するテーマセッションを企画、実施しました。
近年、住宅街やその周辺でヒグマの出没が増加する札幌市のように、都市部において野生動物と人との距離が近づき、市民の安全確保や野生動物との共生が、これまで以上に多くの市民の生活に関わるようになっています。こうした中、いかに幅広い市民の間で当事者意識を醸成し、共生のための活動に参加できる環境を整えるかが課題となっています。
今回のテーマセッションは「野生動物管理に「一般市民」が当事者意識をもって参画できる環境づくり」と題して、酪農学園大学の佐藤喜和教授や遠藤さんら4人の講演者が、さっぽろヒグマ市民会議を含む複数の実践例を共有し、会場の参加者とともに議論しました。
北海道放送(HBC)デジタル推進部の幾島奈央さんは、「ヒグマの出没を速報するだけでなく、原因や対策も一緒に考えていく「ソリューション・ジャーナリズム」が重要だ」として、ウェブサイトやイベントも併用し、ヒグマ対策を多くの人が「じぶんごと化」するための取り組みを紹介しました。
北海道斜里町の北こぶしリゾートの村上晴花さんからは、ヒグマが身を隠しにくくするための草刈りなどのヒグマ対策の活動を、知床国立公園を訪れる観光客や、地元の住民の参加を得て行う「クマ活」の実践について報告がありました。
遠藤さんは「ミニ・パブリックスは野生動物管理に市民が参画する契機になるか?」と題して、2022年2月に実施したさっぽろヒグマ市民会議について報告しました。
大会初日、朝8時30分からのセッションでしたが、会場には約60人の参加者が集まり、幅広い市民への問題や対策の伝え方や、専門家とメディアのコミュニケーションのあり方などに関して、活発に意見交換がなされました。
報告する遠藤優さん(上)と会場に集まった参加者(下)
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