気候市民会議さっぽろ2020

趣旨と設計の方針

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気候市民会議とは

2015年にパリ協定が採択され、今世紀後半までに地球全体での温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標が共有されました。これに伴い、世界各地の国や自治体では、排出実質ゼロに向けたさまざまな取り組みが進んでいます。

市民の生活に大きな影響を与える脱炭素社会への転換をどのように進めるべきかについて、幅広い視点から議論するため、フランスや英国など欧州の国々では、2019年頃から「気候市民会議」と呼ばれる会議が開かれるようになっています。これは、社会全体の縮図となるように一般から無作為抽出(くじ引き)で募った、数十人~百数十人の市民が集まって話し合い、その結果を国や自治体の政策に活用するものです。

このやり方を、日本における脱炭素社会の実現に向けた取り組みに応用する可能性を探るため、今回、北海道大学や大阪大学、国立環境研究所などによる共同研究の一環として、札幌市民を対象に実際に参加者を集め、全国初となる気候市民会議(「気候市民会議さっぽろ2020」)を試行しました。

目的

気候市民会議さっぽろ2020は、実社会における課題解決を志向した実践的研究(アクションリサーチ)として、主に次の3つの目的で行いました。

第1に、日本で実際に気候市民会議を開いてみることです。それにより、日本における気候変動対策の取り組みに気候市民会議を活用する実例を、全国に先駆けて札幌から発信することを目指しました。札幌市や北海道を始めとする各地で、また全国規模でも、気候市民会議や類似の方法を活用する上での手がかりを提供したいと考えました。

第2に、今回の会議で得られた議論の結果を、札幌での気候変動対策の取り組みに生かすことです。温室効果ガス排出実質ゼロの「ゼロカーボンシティ」を目指す札幌市のまちづくりに、この会議の結果が生かされるよう効果的にとりまとめ、発信することとしました。

第3に、コロナ禍という異例の状況の中、日程の全てをビデオ会議で実施することにより、オンラインによる本格的な市民会議の運営のノウハウを開発し、それを発信することも目指しました。

会議設計の方針

会議は、欧州の国や自治体で行われている気候市民会議の事例を参考に、今回の実施条件に合わせて設計しました。とくに今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で対面による実施が難しいため、当初から、完全にオンラインで実施する前提で企画しました。

欧州の気候市民会議の多くは「市民議会(citizens’ assembly)」と呼ばれる手法で行われています。「市民会議」は、社会の縮図となる一般市民を集めて議論を行い、その結果を政策決定などに活用するミニ・パブリックスと呼ばれる市民参加の手法の一種です。2004年にカナダで選挙制度改革の議論のために初めて行われ、その後、欧州の国々などでも実施されるようになっています。

無作為抽出により社会全体の縮図となるように集まった参加者が、バランスの取れた情報提供を受けた上で、じっくりと話し合って意見をまとめるのが、この方法の特徴です。異なる意見を持つ参加者同士が十分に議論し、その過程で各参加者の考え方が変わったり、新たな意見が形成されたりすることを可能にするため、市民議会の方法を用いる際には、丸4日間以上の会議期間を確保することが望ましいとされています。

ただ今回は、無作為抽出された市民参加者が完全にオンラインで議論するという条件を考慮すると、1回の会議時間は半日程度が限界であると考え、参加者の負担も考慮して、半日の会議を一定の間隔で4回繰り返すコンパクトな日程で行うべく、会議を設計しました。