さっぽろヒグマ市民会議

札幌市における人とヒグマの問題

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人の生活圏へのヒグマ出没

近年、住宅街や市街地といった人の生活圏にクマが出没する事例が、全国各地で起こっています。こうした人の生活圏に出没する、もしくは出没する可能性のあるクマを「アーバン・ベア」といい、農作物被害や人への加害などにより、市民の日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

北海道札幌市は、人口200万人と日本有数の大都市である一方、市の総面積の6割は森林が占め、都市部に隣接する森林にはヒグマが生息するという、人の生活圏とヒグマの生息域が極めて近い、世界的にも珍しい構造をした都市です。そのため、アーバン・ベアの問題が、他の地域と比較して起こりやすく、かつ深刻化しやすい環境にあるといえます。

実際2000年代初頭から、人の生活圏へのヒグマ出没が度々報告されており、最近では2019年8月に約1ヶ月近くにわたって南区の住宅街に出没した事例、2021年6月に東区の住宅街に出没した事例が大々的に報道され、札幌市内外問わず、多くの人の関心を集めました。特に2021年の東区の住宅街へのヒグマ出没は、札幌市における20年ぶりのヒグマによる負傷事故に発展し、人の生活圏へのヒグマ出没の危険性、問題の深刻さが改めて浮き彫りになりました。

市民の多様な価値観

このように、札幌市における人の生活圏へのヒグマ出没は深刻な問題であり、早急な問題解決が望まれます。しかし問題解決にあたって、市民のヒグマに対する思いや考えといった価値観が多様であることを十分に考慮しなければなりません。

札幌市に限らず、人の生活圏へのヒグマ出没は、様々なメディアで取り上げられ、人々の注目を集めています。その中でも特に出没後の対応をめぐっては、賛否両論幅広い意見が聞かれます。実際2021年の札幌市東区の住宅街への出没時も、出没個体の捕獲という対応に関して、札幌市には様々な意見が寄せられました。

2021年6月30日までに、東区へ出没したヒグマを捕獲した件に対して札幌市に意見を寄せた人の内訳(出典:札幌市からの情報提供)。 中央は寄せられた意見全ての内訳、右は賛成かつ出身地を名乗った人の出身地内訳、左は反対かつ出身地を名乗った人の出身地内訳を表しています。

さっぽろヒグマ基本計画

札幌市では2017年度から、ヒグマによる被害の防止とヒグマとの共生を両立することを目的に、「さっぽろヒグマ基本計画」を策定、実施しています。札幌市におけるヒグマの出没後の対応や市街地侵入抑制策は、この計画に基づき実施されています。

この計画の期間は当初2017年度から5年間で、2021年が最終年度の予定でした。しかし、市街地でのヒグマ出没が相次いだことに加え、家庭菜園用の電気柵貸出や購入補助事業といった新しい市街地侵入抑制策の導入など、ヒグマ対策に関する状況が大きく変化したことから、2021年度から2022年度にかけて、専門家の意見を踏まえて改定作業を行うことになりました。

市民会議の目的

こうした札幌市における人とヒグマの問題を受け、本プロジェクトでは、札幌市民、行政、研究者、専門的技術者が一堂に会し、異なる立場の人々が札幌市のヒグマ対策について語り合う対話の場、「さっぽろヒグマ市民会議」を開催し、市民と専門家のやりとり、参加前後における市民の意識の変化から、札幌市民のヒグマに対する多様な価値観を明らかにすることを目指しました。

また、得られた知見を、札幌市が進めるヒグマ対策基本計画の改定に向けた一つの参照情報として提供し、問題についての市民の熟議を経た意見を提示することを目指しました。