レポート

脱炭素化技術のテクノロジーアセスメント フロントランナーへのインタビュー PART4

脱炭素化技術のテクノロジーアセスメントプロジェクトでは、2021年9月〜12月に、持続可能な未来社会における新たな常識や価値観を構想し、その実現に向けて各分野で活動されるフロントランナー(FR)の方々19人に、個別にインタビューを行いました。

プロジェクト側から、本プロジェクトやテクノロジーアセスメントの趣旨、評価枠組の素案について説明するとともに、各FRの活動領域や専門分野の見地から、脱炭素化技術のELSIを検討・評価する上で考慮すべき観点や事柄について、それぞれ約1時間お話を聞かせていただきました。

インタビューを6回に分けてご紹介します。

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PART4

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地域の人が自ら使える道具としての評価枠組の可能性

ローカル・アクティビスト
小松 理虔さん

―評価枠組案をどのようにご覧になりましたか。

小松:従来、このようなプロジェクト(脱炭素化技術ELSIプロジェクト)には、世の中に出された段階でなければ参画できませんでした。そのプロセスが可視化されただけでも大きな意義があると思います。私が関わる地域の文化系のアートプロジェクトにおいても、評価枠組を変えていくところから始めないと、すべてが動員という数値のかたちでの評価になってしまうと感じています。この4×4のマトリックスは、脱炭素技術を評価するための軸にとどまらず、他への応用可能性を感じます。例えば、地域に工場を誘致するときや行政が新しい事業を始めるときに、市民が16個の枠に当てはめながら考えるツールにもなると思います。

―評価枠組の汎用性ついては我々も意識しています。一方で、この脱炭素化技術、とりわけそのエネルギー技術の社会的、倫理的な影響を考えるときに、やはり原発事故の経験から何を汲み取るかという観点は無視できないと思っています。

小松:私が非常に重要だと感じたのは、「文化・伝統・自然などの内在的価値」が一つの軸となったことです。一方で、マトリックスの図で右にいけばいくほど、その位置づけがまだ明確にはなっていないと思います。田舎の人たちは、経済的価値では評価できないもので動いています。そこをどう評価するのか。シビックプライドのように、地域の人たちには、そこに生まれ育ち、代々土地を受け継いできたという思いがあります。地域でアートプロジェクトを立ち上げるときには、経済に換算されない、その人の生き様やそこで暮らしてきた誇りをどのように育てていくのかを事前のプランニングで考えています。
エネルギー産業、特に原子力の場合は、どうしてもイデオロギーと結びつく傾向にあり、住民の分断を止めることが難しい場合があります。例えば、火力発電所ができたときに、一定数の反対はあると思いますが、原発ほど大きな動きになるだろうかと考えます。原発事故が起きてみて、10年かかってもいまだに住民のあいだでしこりが残るのは、原子力が政治信条のようなものと直結するからではないでしょうか。新しい技術の導入においては、住民間の分断のような要素も、評価枠組に組み込まれるべきだと思います。

―「将来」や「未来」について、どれくらいのタイムスパンで考えることが多いですか。

小松:地域の産業や暮らしに直結する変化については、せいぜい100年ぐらいが自分の想像できる未来だという感覚です。ただ、放射性廃棄物の処分には10万年の時間がかかると言われており、それぐらいのタイムスパンで問題を指摘しておくことが必要だと思います。技術は技術としてそれなりに地域の内在的価値を踏まえた評価が必要だとは思いますが、それとは別に、地域そのものの文化をしっかりと検証する人がいれば、バランスが取れるのではないでしょうか。そう考えると、そこまで深刻に科学技術が背負い込む必要もないと思います。歴史を見れば、平安や鎌倉時代までは自分たちの地域の成り立ちを遡れるわけですから、1000年ぐらいの先のことまで考えることが、文化的、創造的な事業の得意とするところだと思います。それをそのまま技術やエネルギー政策に当てはめるのは難しいようには思いますが。

―いわきでの日常生活を送る中で、脱炭素や気候変動というキーワードを耳にする機会はありますか。

小松:プラスチック袋の有料化やプラスチックストローの廃止といった話ばかりが先行していて、本当に大変な事態になるといった話はほとんど聞きません。これはメディアの問題が大きいと思っています。新聞であれば、脱炭素の話は経済面に掲載されることが多く、地域面や社会面では、例えば温暖化によって台風の勢力が増しているといった内容になり、まだまだ暮らしの言葉に変換されていません。
温暖化という言葉はやたらと聞きますが、それは自らの生業と結びつくことで、初めて温暖化の影響を実感するからです。ただ、それはエネルギーや技術の問題には現状結びついていません。そもそも私自身も含めて、それは国が決めることだという意識があると思います。地元の人が自分事として考えることができるチャンネルがないと、どれだけよい評価枠組を作っても、地元の人たちはそこにアクセスすることもありません。私は、専門家のみなさんが評価枠組を作るのと合わせて、この枠組をどのようにしたら一般化できるのかを考えたいと思います。

―自ら考え行動している人に対しては、その活動を尊重し、そこからこぼれ落ちてしまう部分は、また別の地域の活動やネットワークで拾う。そのような二重構造が望ましいというイメージでしょうか。

小松:社会は多様なレイヤーがあって、はじめて回るものだと思います。原発事故の後に専門性の高い人が無理をして情報発信した結果、「何でこんな簡単なことが分からないんだ」といった荒い議論になってしまい、地元の人の信頼を科学者自らが失っていったところがあったと、私は思っています。それを踏まえて、専門家の中ではこのように細かい部分まで記載した評価枠組が作られる。これとは別に、世の中に出すときには、もう少し余白のあるものにすればよい。その両者をつなぐコミュニケーターのような存在が地域にいれば、この評価枠組は社会的な財産になるのではないでしょうか。

―シビックプライドのお話がありましたが、人々が意思決定をする上で、「プライド」が重要な原理ではないかと感じることがあります。原子力についても、その研究や技術を推進してきた人たちのプライドがあり、他の電源についても同様です。評価枠組を作る上で、その点はどのように考えればよいでしょうか。

小松:最近は医療機関やサッカーチームまでもが「一山一家」という言葉を使い始めています。石炭産業は、労働問題など負の側面がありましたが、今振り返ると、その産業自体が地域コミュニティーの中の一つのプライドになっていて、地域の歴史や文化を考えるツールにもなっています。では、原子力の場合、50年後や100年後にその記憶はどう呼び戻されるでしょうか。確かに地域の経済を成り立たせていたという話にはなるかもしれませんが、それは文化や伝統になるのでしょうか。自らの地域をどのようにして子どもたちに語り継いでいくのか、エネルギー産業を抱えてきた地域の語られ方については考えておく必要があります。文化の民俗学者、地域の歴史の研究者のような人たちにも評価枠組について考えてもらうプロセスを通じて、地域の受け止める力が育まれていくと思います。
もしかすると原子力についても、小型原子炉を使って小学校区などの範囲で住民がプロジェクト化し、「俺たちが自前で作ったものなんだ」というシビックプライドを感じられるようなことも起こりうるのではないか、と思ったりします。自分たちが制御できないものは問題ですが、自ら関わっていくことができれば、地域の受け止め方も大きく変わってくるかもしれません。

(2021年9月22日、オンラインでインタビュー)

こまつ りけん
ヘキレキ舎 代表、ローカル・アクティビスト
1979年いわき市小名浜生まれ、在住。地元小名浜で、地域にまつわるさまざまな企画に関わる傍ら、木材商社営業、かまぼこメーカー広報として地域産品のマーケティングや商品企画、広報PRを経験。15年4月に独立し、ヘキレキ舎を立ち上げ、現在に至る。著書に『新復興論』(ゲンロン)、『地方を生きる』(筑摩書房)など。*所属・役職は当時


ベンチャーへの投資で進む社会的インパクトの評価

ベンチャーキャピタリスト(環境・エネルギー分野)
岩田 紘宜さん

―評価枠組案をどのようにご覧になりましたか。

岩田:最近のトレンドとしては、リスク・リターンのみの投資ではなく、社会的インパクトを評価する流れが非常に強くなってきています。現在は、そのための枠組づくりの整備が進んでおり、「3E+S」のような観点も含まれていますが、この評価枠組にはそこに欠けている視点が含まれていると思います。

―具体的にはどのような指標が社会的インパクトとして評価されているのでしょうか。

岩田:大手のファンドが手掛けている上場企業に関しては、既に企業が示している項目、例えば温室効果ガスの排出量などが評価されます。他には、女性の社会進出を助けることによる社会的な影響、アフリカで環境分野の事業を展開するスタートアップ事業に対しては、エネルギーの供給や無電化地域の削減への貢献なども評価します。そのような項目について、ファンドが数字を出し、SDGsの項目などを使いながら評価しているのが実態です。
私は小規模なベンチャー企業を相手にしているので、そのような細かい数字はなかなか出しにくい部分があります。そのため、事業が成長したときにはどれくらいの雇用が発生するのか、あるいはその国の経済成長や公益性にどれだけ貢献するのか、社会的にポジティブなインパクトを与えるものに関して、定性的な側面を中心に評価することが現在検討されています。

―様々な投資対象があると評価の比較が非常に難しくなると思います。現場ではどのように対処されているのでしょうか。

岩田:社会的インパクトの指標については、投資前に、技術の導入がどのような意図でなされているのかを検証したり、それに対する評価のモニタリングをしたりします。その過程で情報開示をしっかりと行ってもらい、中長期的に一つのインパクトを評価していきます。ESGの世界では、中長期的に社会的な大きなインパクトが与えられる事業は、事業としても成長し、リスクも小さいという考え方があります。

―環境運動などに取り組まれる方は、地域の歴史や文化を特に強調されます。こうした価値は、金融の分野ではどの程度参照されるのでしょうか。

岩田:例えば文化財の破壊につながる事業に対しては当然投資をしませんが、それを特に強調している印象はありません。それよりも、俯瞰的に見たときに、社会に対してよい影響が与えられるかどうか、インフラの普及や経済の成長、あるいは人々の雇用創出といった側面を見ていくケースが多いかと思います。

―今後、脱炭素化技術として成長していきそうな技術や、社会的なリスクが予想される技術はありますか。

岩田:短期的な視点では、再生可能エネルギーの普及に資する技術ですね。出力が変動する電源の普及に関しては調整力電源が必要になりますので、蓄電池やEVのコストダウンが今後進んでいくと思います。中長期的な視点では、既存の技術を根本から覆すような、ディスラプティブなテクノロジーに注目しています。個人的に注目しているのは核融合で、2030~2040年頃から社会実装が進むと言われています。社会で普及するには何十年も時間がかかる領域ですが、人類のエネルギー問題、二酸化炭素の排出の問題などを全て解決し得るような技術となりうると思います。

―核融合のような分野では、想定外のことが起きやすくなると思います。その際の投資リスク、社会的なリスクはどのように見ていますか。

岩田:核融合は原子力と違い、熱暴走しにくく、プラズマが消えれば核融合反応は起きなくなるので原理的な安全性があります。また、核廃棄物もほとんど出ません。その前提を踏まえた上で、ESGの項目で言えば、開発された技術が武器などに転用されないこと、実証段階に移る際の立地地域における懸念などは考えておく必要があります。我々も投資する場合には、出資して終わりではなく、オブザーバーとして継続的に支援をしていきます。

―インパクト投資の指標について、ネガティブとポジティブなインパクトはどのように整理されていますか。

岩田:私自身は直接の専門家ではないので、そこまで詳しくはないのですが、インパクト投資の指標はたくさんの数があり、チェックシートを使ってそれを埋めていくようなものをイメージしていただければよいと思います。原子力や兵器に関すること、あるいは公序良俗に反することは最初にネガティブスクリーニングを行ったうえで、様々な社会的インパクトの項目に対して、定量的な結果を踏まえながら点数付けを行うイメージです。

―リスクマネーを張る領域に関して、大事にしている視点はありますか。

岩田:私自身は産業側からは生まれてこないような新奇なテーマに関してしっかりと支援するべきだと思っています。その際は、金銭面だけではなく、技術的なノウハウや事業計画の段階から支援を行い、経営者の方と一緒に取り組んでいくことが重要だと考えています。

―「将来」や「未来」について、どれくらいのタイムスパンで考えることが多いですか。

岩田:エネルギーベンチャーやインフラ領域に近いところは、短期間で言えば5~10年、中長期で言えば10~20年のイメージです。通常はファンドの満期が10~12年なので、それまでに投資先には利益を出してもらう必要があります。

―そのタイムスパンの中で、将来の日本社会を考えたときに変化すべき点や、改善すべき点はありますか。

岩田:日本社会は、依然として欧米に比べると環境意識が低いように思います。日本は安定や安全を強く信仰する側面があるので、それがビジネス界からは少し壁になっていると感じています。

―その点について、投資を通じてそこに働きかけていることはありますか。

岩田:我々のようなVCの会社が新しいビジネスモデルに積極的に投資をすることや、社会的な普及を促す活動が非常に重要だと思っています。

(2021年10月1日、オンラインでインタビュー)

いわた ひろよし
1988年生まれ。2013年4月にプラントエンジニアリングの会社に入社。インドネシアのアブラヤシからバイオ燃料を製造するプロセス技術開発に取り組む。その後はバイオマス発電や地域エネルギー事業など電力分野の営業企画やマーケティングを担当。19年、ベンチャーキャピタルに転職し、エネルギー・環境領域を中心に投資を手掛けている。*所属・役職は当時


新しい技術を社会に導入する上で包括的な評価枠組が必要

元環境系ベンチャー企業CEO、広報経営
流郷 綾乃さん

―評価枠組をどのようにご覧になりましたか。

流郷:以前の会社では昆虫飼料を作っていましたが、そのときに、昔ながらの昆虫を採って食べるやり方では経済性が伴わないので、工場を造らなければならないという話が出ました。しかし、それは果たしてサステナブルなのかという指摘を頂いたことがあります。新しい技術は、環境に対してどれくらいのインパクトを与えるのか、不明確な部分が非常に多く、そうした評価のもとになる枠組ができるというのは、非常に興味深いです。
実際に私たちが昆虫の工場を日本国内に造ろうとしたとき、一番の課題は法的な問題でした。我々が扱うのは畜産の糞尿処理を得意とするイエバエという種類のハエで、現状の産業廃棄物処理の法律は、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が基本になります。畜産の排せつ物は、産業廃棄物扱いになるのですが、「これはごみ処理の技術なのか、昆虫をつくる(養殖)技術なのか、肥料を作る技術なのか。飼料を量産する技術なのか。あなたたちは一体何をするんですか」という質問を関係する省庁の方から受けました。
経済性の観点では、そもそも畜産の排せつ物は産廃なので、その処理を引き受けることによって利益を得ることができ、畜産の糞尿処理によって造られる肥料(イエバエが幼虫になる過程で糞尿を分解・吸収)と飼料(イエバエの幼虫)も売ることができます。一つに絞るというビジネスモデルではなく、この3つのトリプルインカムで経済を潤していくという仕組みでした。ただ、そのときに「あなたたちは産廃業者なのですか」と問われるわけです。畜産の排せつ物処理になると、中間処理免許が必要になります。その免許を取ると肥料は売れますが、では飼料は一体何なのか、という話になり、それはどのようにすれば売ることができるのか、日本ではその判断が曖昧でした。現在はEUを中心に法整備が進んでいますが、日本では法律の壁にぶつかりました。
「安全性を担保できる商品と言えますか」と問われれば、何を持って安全とするのかさえ決まっていない現状ではそこから決めていく必要があり難しいと言わざるを得ず、そういった意味で不安定な事業モデルになってしまう側面がありました。廃掃法は解釈の余地が大きく、それが自治体に下りてきたときに、自治体独自の解釈をされると、その時点で経済性が危ぶまれてしまいます。
倫理的・社会的課題として、自治体の人からは、昆虫は多くの人から嫌がられる存在でもあり、住民の理解を得ることが難しいと言われることもありました。そのイメージを覆すために、あえてメディアに積極的に露出していた時期もありました。私の専門がパブリックリレーションなので、公共の仕事に携わる方や住民の方とどのように対話していくのかが重要であると感じています。

―拝見したインタビュー記事の中で、ご自身が仕事を選ぶときの基準は、自分の子どもが80歳になったときに役立っていて、面白いと思ってもらえる事業かどうかにあるというお話が印象的でした。

流郷:私自身、以前は自らを消費するような働き方をしていて、家族にも迷惑をかけていましたが、私にとって一番大切なのが子どもです。その子どもが80歳ぐらいになって、子や孫もいるような時代にまで役に立ちつづけて、面白いと思われつづけているような事業をやっていきたい、という思いがあります。

―そうした事業たりうるかを判断する上で大事にされている物差しや基準はありますか。

流郷:今の時代はSDGsやESGが社会に浸透していて、事業を起こそうとする方は、基本的には未来を見据えながら、現在の社会問題に対して、解決策を出そうとされていると思います。その方々の話を聞いたときに、私自身の軸に照らしても、基本的にそこまで否定的な意見が出ることはありません。私がスタートアップの経験が長いですが、ここ1年でも関わる方は多岐に渡ってきました。どの産業の方々にも、どの事業体の方々にもサステナブルやESGといった考え方が重要であり、指標であることが広がってきている証拠だと思います。その中で一番深く考えているのは、子どもたちが大きくなったときのことをイメージして判断をする感じです。

―そうしたタイムスパンの中で将来の日本社会を考えたときに、変化すべき点、解決すべき点はありますか。

流郷:PR目線かもしれませんが、世界全体でSDGsという2030年までのゴールが掲げられているのは、非常にありがたいと思っています。それによって、日本も含め世界的にも何かを課題解決するときの大きな指標になっていると思います。例えば、私自身がシングルマザーで貧困の時代があったので、子どもを抱えて一人で生きていくための助けが必要だと思っています。政府として慈善団体として助ける手立てはあっても、それを知り得ない情報弱者の問題があります。その情報をどのように手渡しできるかは考えていかなければいけないと思います。
一方で、全てを情報として管理してしまえば、それは解決できるのかもしれません。例えば、日本の森林の保有者の問題では全てマイナンバーで紐づければ、森林は適切に管理され、COの吸収量は的確に管理することができるかもしれません。CO2 を吸収する森林を大規模に管理できれば、現状は大きく変わる可能性があります。情報を全て一括で管理することのメリットとデメリットがあり、それが果たしてよいことなのか、非常に難しい問題だと思います。

―事業を子どもに継承するときの年齢のイメージは、大体子どもが30~40歳の頃だと思います。子どもが80歳になったときという発想は何かヒントがあったのでしょうか。

流郷:自分が想像できるレベルというイメージです。例えば私から見た孫の代になると、存在し得るかどうかも分からなくなります。もしかしたら、私の子どもは子どもを産まないかもしれないし、自分自身の孫の話をしてしまうと、子どもはものすごくプレッシャーに感じるのではないかと思います。ただ、子ども自身には長生きしてほしいと思いますので、私自身の想像できるレベルの80歳です。

―法の制約や役所の縦割りの問題は粘り強くやらないと変わらないと思います。その原動力は何なのでしょうか。

流郷:私自身は、事業を前に進めたい、しかも最短距離で進めたいという思いが強くあります。そうしないと間に合わない事業もあると思っている部分があります。今、宇宙開発の会社に関わっていますが、現状ではどこの国も確実に環境負荷がかかるような開発の仕方しかできていません。そう考えると、急いで現状を変えていく必要があり、自分が関わることができる範囲の取り組みをどこまで年数を縮めて実行できるのか、つねに考えています。

(2021年10月5日、オンラインでインタビュー)

りゅうごう あやの
スパイスファクトリー取締役CSO、SPACE WALKER顧問 サスティナブル推進経営企画室、前ムスカCEO
1990年生まれ。ベンチャー企業の広報として活躍後、フリーランスの広報として独立。スタートアップなどに対して広報・戦略コンサルティングを担当。2017年11月、広報戦略として生物資源ベンチャー「ムスカ」に参画。18年7月に代表取締役暫定CEOに就任。数々のビジネスコンテストにて最優秀者やSDGs賞を受賞。2020年11月に退任。*所属・役職は当時


脱炭素化技術のテクノロジーアセスメント フロントランナーへのインタビュー PART5

  • 最低限のエネルギー消費は誰もが等しくあるべき……………………………白木朋子さん
  • 脱炭素は人間のあり方をゼロベースで考え直すきっかけになる   ………石川伸一さん
  • 「脱管理」と「自立」のコミュニティを目指して……………………………秋吉浩気さん