プロジェクト

脱炭素化技術の日本での開発/普及推進戦略における ELSI の確立 テクノロジーアセスメント

脱炭素化技術のテクノロジーアセスメントとは

気候変動対策に関するパリ協定が2015年に採択されたのを契機に、温室効果ガスの排出を今世紀半ばまでに世界全体で実質ゼロとする「脱炭素化」に向けた国際社会の動きが活発になっています。日本政府も2020年10月、2050年までに排出実質ゼロを実現するという目標を宣言しましたが、日本の脱炭素化への対応戦略では、特に技術のイノベーションに力点が置かれています。こうした技術⾰新は、排出削減という直接の意図を超えて、さまざまな社会的な影響を⽣み出すことが予想されます。

脱炭素技術に限らず新たな技術の導入が急速に進む場面では、その技術がもたらす倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI=ethical, legal and social issues)を多面的に検討することが重要となります。テクノロジーアセスメント(TA)は、科学技術の社会的な影響を検討する仕組みの一つで、科学技術の開発や利用に関する社会的意思決定を支援するため、科学技術の社会的影響を多面的に予測し評価する活動のことです。脱炭素化技術の副次的な影響を早い段階で明らかにし、それらに対応しつつ技術の開発・利用を進めるには、技術の専門家のほか、幅広い関係者を交えて対話する参加型TAの仕組みが有効と考えられます。

私たちは、脱炭素化技術ELSIプロジェクト(代表=江守正多・国立環境研究所地球システム領域 副領域長)の一環として、脱炭素化技術のELSIについて検討するため、2021年春から参加型TAの活動に取り組んでいます。エネルギー関連分野の脱炭素技術を主な対象に、諸分野を牽引するフロントランナーの方々と技術の専門家による対話を通じて、脱炭素化技術の普及がもたらしうる社会的な影響を把握し、脱炭素技術のELSIを多面的に評価するための「評価枠組」の検討を進めています。

「評価枠組」の開発は脱炭素化技術ELSIプロジェクト評価枠組グループが担当しています。

結果報告

報告書(2022年3月発行)

 

研究メンバー

  • 三上 直之(名古屋大学大学院環境学研究科教授、環境社会学・科学技術社会論)
  • 八木 絵香(大阪大学COデザインセンター教授、科学技術社会論・災害心理学)
  • 松浦 正浩(明治大学専門職大学院ガバナンス研究科専任教授、合意形成論・交渉学)
  • ハルトヴィッヒ・マヌエラ(国立環境研究所地球システム領域特別研究員)
  • 江守 正多(研究代表者・東京大学未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所地球システム領域上級主席研究員、気候変動の将来予測とリスク論)

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脱炭素化技術のテクノロジーアセスメントは、脱炭素化技術ELSIプロジェクトの一環として実施しています。

■脱炭素化技術ELSIプロジェクトについて
正式名称は「脱炭素化技術の日本での開発/普及推進戦略におけるELSIの確立」(グラント番号:JPMJRX20J1)。JST-RISTEX(科学技術振興機構 社会技術研究開発センター)のRInCAプログラム(科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム)の研究開発プロジェクトの一つとして、国立環境研究所と北海道大学、青山学院大学のほか、東京大学、京都大学、大阪大学、明治大学、一橋大学が参画して、2020年9月から2023年8月までの予定で実施。

▽プロジェクト紹介(JST-RISTEX(科学技術振興機構 社会技術研究開発センター)ウェブサイト)
https://www.jst.go.jp/ristex/rinca/projects/jpmjrx20j1.html
https://www.jst.go.jp/ristex/output/example/needs/03/rinca_emori.html